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本音と建前は空転する 「<建前 - 本音>議論」の詭弁、無意味性

確か加藤典洋の『日本の無思想』だったはず。

日本の無思想 (平凡社新書 (003))

日本の無思想 (平凡社新書 (003))

 

 その中に「本音と建前は、どっちにもあてはまる」という話が、文学賞の架空のケースを題材に論じられていた。

ちょっと読むと言ってることが分からなかったのだが、今回、別のケースで書いてみようと思う。

なぜ理性よりも感情が重視される?「 クソ社会が続くだけなら、本音を言わせてもらうぜ!」 - Ameba News [アメーバニュース]

という記事を見て思った次第。

「本音とは何か?」ということと、トランプの言説について。

 

某人の話などを聞くと、「トランプの人種差別的発言は、得票のために言っただけの、単なる建前」ということらしい。

しかし、世間一般では、あれを「本音」として捉えている。

ここでは、要はその「トランプの真意」なるものが、結局のところ決定不可能だということに尽きる。

本音:人種差別的考え 建前:得票

建前:得票 本音:人種差別的考え

 

これには前段がある。つまり、

建前:PC 本音:人種差別的考え

ということである。しかし、某人によれば、

建前:人種差別的考え 本音:得票

となる。ここで、論理が空転する。つまり、厳密にはこれは話題そらしなのである。建前というのが、「倫理的に維持すべきもの」から「単なる嘘」へとその意味が変化している。

そして、空転するのは、「単なる嘘」と言う時である。

なぜなら、嘘かどうかを決定できるのは本人しかいないからだ。それは「気持ち」は本人しかわからないからだ。だから、結局のところは、その本人の「気持ち」を他人がどうこう言っても「無意味」というに尽きる。そして、議論をこの話、『気持ちの話』に引き込むことは、議論を悪くすることなのである。

 

また、付け加えるならば、この「建前 - 本音」の論理の鎖は、「風が吹けば桶屋が儲かる」ごとく、無限の後付を許す。

たとえば、ここで架空の大統領がいる。

彼は人種差別的発言を繰り返した。それは得票を得たいがためであった。「得票」の理由を「娘が喜ぶ」というようにしたとしよう。そして、では娘はなぜ喜ぶかといえば、娘のブランドが儲かるから、というようにしよう。そして、なぜ娘のブランドが儲かることを目指すのかといえば、何か買いたいものがあるから、としよう。で、なぜそれが買いたいのかとすれば、それを娘が買うことで、娘が大事にしている人が儲かるから、としよう。で、なぜその娘が大事にしている人は儲けたいのかとすれば、父親に自分の力を認めて欲しいから、としよう。

 

さあ、ここで整理しよう。架空の大統領候補の『本音』とやらをだ。

建前:人種差別的発言 本音:得票

建前:得票 本音:娘に喜んで欲しい

建前:娘に喜んで欲しい 本音:娘のブランドが儲かる

建前:娘のブランドが儲かる 本音:娘が買いたいものがある

建前:娘が買いたい者がある 本音:娘が大事にしている人が儲かる

建前:娘が大事にしている人が儲かる 本音:その人が父親に自らのビジネスの才能を認めて欲しい

 

このように、事物の関係性というのは複雑に連なっている。

つまり、何が「本当の動機」なのかというのは、単純には決定出来ない。

そのような論理の底なし沼に入り込んでしまうのが「<建前 - 本音>議論」なのである。つまり、解が恣意的になってしまう。

 

物事を判断する時は、その「行動の事実」のみに焦点を当てなければならない。

「いや、本当はこういう理由があった」などという下手な弁護は止めなければならない。それで通じるなら、「これは人類を救うためなのだ」と言えばどんなことも許されることになってしまう。

それは詭弁である。